最近、幻冬舎の旗色が悪い。
とはいっても、恐らく現場で働いている人たちは、精一杯頑張っているんだろうなと思います。
ただひとり、見城徹という人物を除いて。
今回は度々問題発言をしてはツイ消しをしたりしなかったりする見城社長、作家陣や他社の編集者から大ひんしゅくを買ってしまったあの辺のお話や、作家さんも大変なんだなということを書きます。
結局今回の騒ぎって、なんだったの?
かねてより百田尚樹さんの「日本国記」に対する批判をツイートしていた津原泰水さんの文庫本の出版を、幻冬舎が取りやめるという流れになったのが今回のコトの発端のようでした。
「日本国記」に関しては、Amazonの低評価レビューを見て頂けば分かるように不確定な情報や矛盾した記述もあり、初版では「ネット上に書かれているものをコピペしたのでは」と疑われる内容をも含んだものでした。
私でも一応名前くらいは知っている名の知れた作家さんの手掛けたものとは、到底思えない内容だった訳ですね。
(この本や作家さん、出版社周りで右だ左だという人の発言も見掛けますが、それはとりあえず置いておきます)
この件についてヒートアップした失言マスター喧嘩っ早い見城社長、とうとう幻冬舎で出版された津原さんの本の実売数をバラしてしまいます(本当かどうかは不明)
方々から反撃を受け、今回は謝罪して実売数晒しのツイートを削除という流れになったのですが…
詳細はこの辺の記事が詳しいです。
この記事でもスクリーンショットが引用されていますが、消したら増えるのがネットの世界なんだな。
私もこの実売数晒しツイを見た時は「はぁ?」って思いましたね。
というのも、漫画もそうですけど本って、内容の良し悪しに関わらず出版社がどれだけ売り込んだか、広告に力を入れたかで売り上げが全く変わってしまうんですよ。
つまり、見城社長のこの発言は自分の出版社がどれだけ売る努力をしなかったか・宣伝力がないかというのをバラしていることにもなる訳で…
その辺のツッコミは、Twitterでも本職の編集者さんたちから散見されるので、これはこれで面白いです。
書店に本を押し付けているという疑惑も…
「日本国記」については、こんな話も出てきました。
コトの真偽は不明ですが、ここで見城社長の発行部数は60万部というツイートが掲載されています。
Amazonのレビューで「作者は400万部と言っているが、100万部も出ていないだろう」みたいな目測を立てていた人の批判は、あながち間違いではなかったのでしょうね。
…というか100万部はともかく、400万って…
見城社長は敏腕編集者だった?
かつては凄腕の編集者だったと聞きましたが、こんな恥ずかしい姿を見るとうーん…ってなっちゃいますね。
見城社長と百田さんといえば、佐藤浩市さんの発言に対するフェイクニュースに百田さんが激昂していた頃の見城さんのツイートも目に入ってきたんですが…
見事に百田さんの太鼓持ちと化していました。
…あー、敏腕ってそういうスキルかー。みたいな。
佐藤さんの発言とされるものが、原文をどうやったらこんな風に読めるんだというくらいの間違いだったことが明らかになった後も、何ら訂正も行われていないところを見ると人間的にはちょっとなぁと思いました。
自分の出版社に大きな売り上げをもたらす大先生にはヘコヘコして、それ以外には居丈高なのね。
なんというか、こう…
政治家も失言で辞任勧告とか出る出ないの騒ぎになっているし、とりあえず社長の椅子にはもうちょっと世渡りが上手い人に座って貰って、影のドンとかでもやった方がまだ会社のためにもなるんじゃないかなーと。
トップがあんまり醜態を晒していると、それだけで組織全体の信用も失われていきます。
下で働いている人も浮かばれませんよ、これじゃ。
とりあえず、津原さんには別の出版社で出して売れて欲しい
津原さんのTwitterのホームで固定されているツイートのツリーを見ていて、なんだか悲しくなってしまいました。
やり取りの大半はメール。「会社に来て、いろいろ考えてみましたが、『ヒッキーヒッキーシェイク』を幻冬舎文庫に入れさせていただくことについて、諦めざるを得ないと思いました」と1月8日15時54分受信の担当メールに残っています。これを読み、僕の方から袂を分かったと感じる人はいないでしょう。 https://t.co/wwQgce2afW
— 津原泰水=やすみ (@tsuharayasumi) May 15, 2019
元は幻冬舎からの依頼で書いたという今回出せなくなってしまった本ですが、出版社を変えて出して欲しいものです。
それで売れてくれたら、(幻冬舎関係者以外)みんなWin-Winですしね。
と思ったら
同情されてお金も入る。 https://t.co/mUfQyP4sCp
— 津原泰水=やすみ (@tsuharayasumi) May 17, 2019
この本(音楽は何も与えてくれない)、出版は幻冬舎ですが…まあ、働いている人に罪はないですしね。
よかったよかった。
収入も不確定な作家の世界
田中芳樹事務所の足立裕章さんが、出版社がどういう流れで本を出すかや作家がその本によってどれだけ収入を得られるか目測を付けるまでの話など、興味深いツイートをされていました。
詳細は、Twitterでこのツイートから繋がるツリーをご覧ください。
「なんで出版社は売れない本を出すのか」という書き込みがあった。まあ、ふつうに考えると、出すまで売れるか判らんし、とか、売れるための努力は出版社も作家もするし、とか出てくるけど、やっぱり「取次があるし」という答えは避けて通れないんだよなあ。
— 安達裕章 (@adachi_hiro) May 17, 2019
途中でツリーが途切れていたので、ここから繋ぎ直し。
ここまでだと出版社と取次が本をネタにお金をぐるぐる回しているだけのように見えるかも知れんけど、この仕組みがあるおかげで、出版社は「この本、売れるかな」と考えちゃうような本も「よし、出してみよう」と言ってくれてるのは確か。取次がなくなったら、確実に売れる本しか出版されなくなるかも。
— 安達裕章 (@adachi_hiro) May 17, 2019
税務署の人もびっくりな、予測がつかない作家さんの収入…
以前、税務署の人にその話をしたら「じゃあ作家さんは仕事を請けるときは、いくら収入になるか分からずに請けてるってことですか?まさかそんなことはないでしょ」って言うから「……その、まさかだよ」って言ったら絶句してた。でも、ふつうに考えたらオカシイと思うのかも。
— 安達裕章 (@adachi_hiro) May 17, 2019
そう、どれだけ刷るか、いくらで売るかなどは出版社側が決めるので、作家側には自分が一冊本を書いてもいくら入ってくるかは執筆を終えた時点では分からないことも多いんですね。
そういえば「しょぼい喫茶店の本」の時は、出版社の方が頑張って初版1万部で賭けに出た形で、内容のよさ(エモさ)もあって好調なようです。
でも、やっぱり名の知れた作家という訳でもない(出版の世界では新人さんな訳ですし)えもてんさんの本をそれだけ出すのも、大分思い切ったことだったでしょうね。
これを推していきたいという、出版社さん側の情熱を感じました。
出版社や担当次第では、売れるものも売れなくなってしまったり、逆もまた然りだったりする本の世界。
埋もれた名作が、本当は沢山あるのかも知れませんね。