「エウリアン」という言葉をご存知でしょうか?
今はもう大分廃れているようですが、かつて秋葉原などで幅を利かせていた高額な絵画を売りつける連中を称した呼び名です。
今もどこかでこうした無理筋な売りつけ方をやっているようですが、ネットが発達して
手口はこういう感じです。
2013年にはネットメディアでも詳しく取り上げられ、問題視されていますね。
私がグランプリアート(現在はネイチャーボーイと改名しているようです)絵を売りつけられたのは、20になって早々の頃。
当時は世間知らずで、友人を亡くしたばかりで辛い気持ちを送る日々だったのもあり、引っ掛かってしまいました。
まだインターネットも導入する前で、こういった押し売りや詐欺の情報を得ることが出来なかったのも不運だったと思います。
でも「知らなかったから被害に遭っても仕方がない」では済みません!
今回は私が絵を売りつけられた時の実体験と、もし強引に絵などをを売りつけようとする場面に遭遇してしまった場合の対処法などをお伝えします。
危険はどこにでもある
エウリアンの被害はそうした企業が店舗を出している場所(秋葉原や銀座など)での話が多く聞かれますが、流石に地方にはそういった固定の拠点のような場所はありません。
ですが、デパートやショッピングモールの片隅に出展し、他の催事と変わらない雰囲気で入場料なしで絵が見られますよ~という体でいる時もあるので要注意です。
私が遭遇してしまったのも、こういう出張の展示でした。
ショッピングモールの一角で
もう20年近くにもなりますが、今はなき近くの寂れたショッピングモールの片隅で、その展示は行われていました。
何度かそういう展示をやっているのは見かけたことがあったのですが、それまでは他に用があって通り過ぎていただけだったんです。
(当時の秋葉原などのエウリアンのように、通りすがりの人を強引に誘うまではやっていなかった)
ラッセンのイルカの絵などは他の機会にも見たりしていて好きだったのと、その日は時間があったのでその展示の中に入っていってしまいました…
中は移動できる壁で仕切られたギャラリーのようになっていて、何点かの作品が展示されていました。
殆どが前述のサイトにも出ていた、ラッセンやヒロ・ヤマガタのシルクスクリーンです。
そして社員が話し掛けてくる内容も一緒…
私にはベテランっぽい女性の社員と、新入社員の若い男性が付きました。
どの絵が好きかと聞かれて、私はそこに飾ってあったヒロ・ヤマガタの絵に惹かれていたので告げたのですが、それはもう売約済みだと。
しかし「特別に新作をお見せします」と壁とカーテンで仕切ってある奥のブースに連れて行かれたのです。
これも、彼らの手口だったのです。
個室に閉じ込め、あの手この手
表の展示場では公開していない限定の作品と称して見せられたヒロ・ヤマガタの絵は確かにいい作品でしたが、私が興味を持った絵のように感じ入るものはなく、欲しいとも思いませんでした。
それに、私は時給の低いパートの身です。
何十万もする絵を買える筈もなく、何度も「お金がないから買えない」ということを伝えたにもかかわらず、社員たちの説得(?)は続きました。
私のためだとか、買った絵を励みにして成功したという女性たちが絵と一緒に映っている写真だとかを見せられたり、心の弱っている部分があればそれを突いてきたりします。
「これは欲しい絵じゃない」「こんな値段ではとても買えない」と何度も伝えましたが、それでも粘る粘る。
私も無理にでも帰ればよかったのですが、2人に退路を断たれた密室に近い状態で長時間迫られているうちによく分からなくなってしまいました。
家族と一緒に住んでいるし、こんな大掛かりなものを勝手に購入するのは難しいと言っても「家族にはポスターでも買ったということにすればいいじゃないですか」と言われて、通常なら何を馬鹿なことをと思うことすら、正常に判断できなくなっていたのです。
結局、買わされてしまった…
結局契約を結んでしまった私は「これでよかったのかなぁ」とグレーな腑に落ちない気持ちのまま帰りました。
最終的に約5年の分割で、手数料も含めて100万近いお金を払っていくことになってしまいました。
その後も絵が届くまで、届いた後もその際の若い社員の方から電話が掛かってきて、なんというか優しいことを言われるんですね。
あれはクーリングオフをさせないための手口だったようです。
若い男性客には若い女性を宛がうのと一緒で、私や女性向けに用意されたのがその男性社員だったのでしょう。
確かに優男でしたが、別に好みではなかったな…
この男性社員、親身なフリで「何かあったら気軽に電話してきてください」と言っていたので、真に受けて時折家庭環境で辛い時や死んだ友人のこと、支払いが苦しいことなどを話していましたが、しばらくしたら「辞めた」と言われました(笑)
重い話ばかり聞かされて逃げたんでしょうね。
でも私は、その程度で100万近い分働いて貰ったとは思っていません。
きっと同じような手法で沢山の女性を引っ掛けたことでしょうから、仕事であろうがホストのように自分を餌にしてこういうことをしてきたツケはどこかで払うことになったんじゃないかと思います。
今だったら知識を持ったり社会に揉まれた分、こんなのに引っ掛かるなんてあり得ないという内容の押し売り商法でしたが、当時はまだ純粋だったのでカモにされてしまいました…
振り返ると、詐欺に遭ったり宗教や情報商材を売る自称インフルエンサーのことを信じてしまう人がどういう風にそうなってしまうのか分かります。
「お金を出して買ったものなのだから、いいものなんだ」と無意識に自分に言い聞かせてしまうという心理も。
私も満足に絵を飾る場所もなく、延々と支払いだけが続く日々に後悔するようになるにはほんの少し時間が掛かりましたし、相手はクーリングオフの期間が終わるまで逃げ切れば勝ちみたいなところもあるのでしょう。
※現在では勧誘の際に事実と異なることを言われた場合などには、1年後までクーリングオフが可能になっています。
もし後から「こんなもの買わなければよかった…」となってもなんとかなる場合があるので、絵の押し売り以外にも途中で目が覚めたら消費生活センターなどに相談してみてください。
絵の価値に愕然
インターネットが当たり前の生活になった頃、ふとした時に自分の絵がいくらで取引されているのか調べてみました。
そして愕然としました…
絵画を取り扱っているサイトでの買取価格が、20万するかしないかだったのです。
(何年か後に見たら12万とかになっていました)
カラクリさえ理解していれば、そりゃそうだろうとなります。
刷る気になれば何枚でも作れるシルクスクリーンに、そんなたいした値段は付きません。
売りつけられた時の金額は、ほんの片手で足りるくらいの諭吉さんがアーティスト本人に渡り、その他はみんな取り扱っている企業の懐に収まります。
いくら流通や人件費にお金が掛かったりしても、あまりにも酷すぎません?
エウリアン系の企業は、今でもどこかでこういった押し売りをしているようです。
ご注意下さい。
もしエウリアンに遭遇してしまったら…その対処法
彼らの強引な手口は「エウリアン」などと検索すれば沢山出てきます。
こういった悪質な商法をしているギャラリー系の起業はひとつふたつではなく、いくつもあるので(今は倒産しているところもあるようですが…)
都市部だけでなくどこへ行っても注意した方がいいですね。
もし、こうしたエウリアン系の人たちの勧誘に遭遇してしまった場合は、まずギャラリーや展示場に入らないようにしてください。
とにかく避ける
ギャラリーなどの入り口には、大概若くて容姿がいい女性や感じのいい女性(こちらは年齢を問わない)が配置されています。
チラシやポストカードみたいなものを配っている場合もあるようですね。
そういう人たちに声を掛けられた場合も、目を合わせない、応じないで足早に立ち去るのが一番です。
ラッセンやヒロ・ヤマガタの絵を見たいなら、押し売り行為をしてこない、ちゃんとしたギャラリーを調べて行くべきですね。
大きい精彩な絵を見たい!という訳でもなければ、正直ジグソーパズルコーナーの見本で充分だと思います。
また、ネット上でも「このエリアにあの会社のギャラリーがある」なんていう情報を知ることも出来ると思いますので、活用して近辺には近づかないようにするのもいいですね。
とにかく道端や通路での勧誘行為には、まともに取り合わないようにしましょう。
気の弱い方は急いでいるから、という口実を使ってもいいですが、出来るだけ徹底無視する方が、相手も諦めてくれ易いです。
もしギャラリーや展示場内に入ってしまい、おかしな説得を受けたりしつこくされた場合は…
キレる、不快感をはっきり顕わにする
およそ普通の態度では、あちらもあまり動じないので、思い切って怒りや不快感を顕わにし「そういう売り方は嫌いだ」「そういうしつこいやり方は違法ですよ」とはっきり口にした方が、早くそこから出られるでしょう。
社員も相手が交渉できないくらいの状態になってしまえば諦めてくれる可能性も高くなりますし、何より社員の方がこちらを客にならないと見て悪い扱いをし出すのをけん制できるかも知れません。
そういった態度を取るのが無理であれば、やはり「もう時間がないので」と言いながら無理矢理振り切って出て行くくらいしかないですね…
クーリングオフを受け付けられなかった場合は…?
万一購入の契約まで持っていかれてしまった場合は、なるべく早くクーリングオフするしかないです。
最近は行政処分などを恐れてやらなくなったところの方が多いとは思いますが、クーリングオフを受け付けずに裁判沙汰になったエウリアン系企業もあります。
もしクーリングオフしませんと言われた場合は、消費生活センターに相談して適切な方法を教えて貰ったり、相応の処置を頼むことになるでしょう。
絵画鑑賞は心にゆとりがあってこそ
絵を眺める時って、心に余裕がなければ十分に楽しんだり、何かを感じたりすることも出来ないのではないでしょうか?
閉鎖的な空間で相手の判断が鈍るようなやり口で絵を買わせようという手段は、最低だと言う以外にありません。
売る側だって、そんな風に美術品が売れて嬉しいのだったら、本当にどうかしている。
その人たちが売っているのは美術や芸術によるものではないし、こんな商売を続けていたら人の心を失ってしまうでしょう。
願わくば、不当な売られ方をする絵がなくなり、それによって被害を受ける人もいなくなりますように。