えらてんさんのキャンペーンで応募して(ほしいものリストに入れてリプライすると送って貰えるよ~というやつ)買って貰った「しょぼい喫茶店の本」が4月13日に無事到着。
奇しくもその日は「喫茶店の日」とのことで、発売予定日から少しずれての到着だったものの、なんだか丁度いいタイミングになったなと感じました。
元々しょぼい喫茶店の本の連載は百万年書房の連載でちょこちょこ読んでいたのですが、掲載期間が数日だったりして見逃した部分も結構あったのですね。
なので、通しで読めるのを楽しみにしていました。
まずAmazonの封筒を開けると、送り主のメッセージ的なものが書かれた納品書が。
ほしい物リストから送ると、こんな感じになるんですね。
そして本がね、やっぱりこうして読みたかった本を手にすると「紙の本っていいな」って思うんですよ。
電子書籍も増えてきましたけど、やっぱりこの感触とページをめくって読み進めていくのがとっても好きなんでしょうね。
世間ではどうも「どれだけ早く読めるか」「どれだけ沢山読めるか」に注視している人(煽っている人?)がいますが、私は割と別方向ですね。
好きな本は漫画にしろ文章にしろ何回も読み返して味わうタイプです。
読んでから少し間を置いて読み返すと「ああ、ここってこういうことなのかな」とか、新しい見方が出来るようになったりするものです。
だから、1日何冊沢山読んだぞ!というよりは、一冊一冊お気に入りの本を作っていく、増やしていく方のほうが好感を持てるのかも知れません。
と、やや脱線しつつ感想に入ります。
まず表紙がすごくいいよね
表紙の紙の手触りと、えもてんさんとおりんさんのイラスト。
これが味のあるテイストですごく合っているように感じました。
タイトルと同じ色の帯もオレンジで、なんだかほっこりします。
裏表紙にはコーヒーの入ったカップ。
湯気に「しょぼきつ」と手書きされています。
(本文中の挿絵での地図や、Twitterの再現などもこの手書きで描かれているのですが、それがゆるい感じで雰囲気に沿っているなぁ、いいなぁと感じました。
カイリュー木村さんのアイコン、お名前の通りカイリューなんですけど版権に触れなさそうななんかそれっぽい感じのゆるいアイコンになっていて、ふふってなったり。
分かっている人から見れば「あれだよなぁ」ってなるけど、まあセーフみたいな)
そして、カバー付きの本を手にするとつい見てしまうのがカバーを外した時の本の表紙。
こちらには、クラフト紙っぽい紙にコーヒーやチーズケーキ、パフェなどが表紙と同じテイストで描かれていました。
本編の感想
えもてんさんの学生時代から、就活が上手くいかず布団から出られなくなったり、それでもなんとか道を切り開こうとしていく様子が描かれています。
精神のどん底でphaさんの本を手にし、えらてんさんを知ってカイリュー木村さんに出資して貰い、喫茶店を開業するまで。
その道すがら出会ったおりんさんとの物語。
開店してから当初は連日賑わっていたけれど、途中で存続の危機があったこと。
そこから立て直しを図って今に至るまでが、穏やかな温かさを感じる文章で綴られていました。
こうしてみると、大抵の日本人は成人するまでに「世の中の理不尽」に何かしらぶち当たっているように思います。
学校でいじめや教師からのパワハラを受けたり、傍から見ていると「それっておかしくない?」と思うようなことが平気で襲い掛かってくる。
この状態である程度健全を保ったまま社会に出て行ける人は、やっぱりすごいと思ってしまいます。
でも、途中で心が折れてしまったり、何らかの痛みや苦しみを抱えてしまう人が出てしまうのも仕方ない構造だなとも感じました。
子供の心、親知らず
えもてんさんは優しくて誠実な人なんでしょうね。
だから後でもっとこうしていれば…と当時はどうにもならなかったことを悔いたり、苦しい時に母親から言われた言葉をその通りだと思って自分を責めたりしたんじゃないかなと。
というかここのお母さんの言葉、めちゃくちゃ酷いなって連載で読んでいる時も思いました。
彼は彼なりに一生懸命頑張ってきたし、高校の時なんて部活でものすごく頑張った挙句顧問の心無い言葉によって出られなくなってしまうという挫折を味わっているのに、まるで何事もなかったみたいじゃないですか。
自分の息子が朝早く出て夜遅く帰ってきて、突然それがなくなっても何も察するところがなかったのかな?
それともほんの数年の間に忘れ去ってしまったのかな。
でも親って、こういう無神経ところあるのかなって思いました。
私の母は、不登校気味だったりそこそこ問題を抱えている私を前にしても、ちょっと問題から離れている状況だとまるで「手の掛からないいい子」みたいな話や接し方をしてきたんです。
私が朝具合が悪くて学校に行けない…となると、仮病と決めつけて罵ってきたりしたくせに。
人は見たいものしか見ないといいますが、蓋をするにも限度があったんじゃないかなと今でも思います。
連載でその部分を見た時は、親のそんな理不尽なことを思い出したりなどしていました。
話は戻りまして。
自分の藻掻いてきた道を逃げだとか「自分が悪い」という感じに書いてあるところはいくつかあるのですが、それって本当にえもてんさんが悪かったのかな?と考えてしまうんですよね。
もっと周りの大人がちゃんとしていたら、こんなに自分を否定してしまう状況にはならなかったんじゃないかと。
ともあれ、電話の後に飛び降りてしまわなくてよかった。
そこで死ななくてよかった。
要らないのは企業の方なのかもね
理不尽な就活スタイルを要求し、意味のないことに沢山時間とお金と労力を使わせる企業のやり方、昔から疑問でした。
就活生の中には「就活の攻略法」を学ぶのにリソースを欠いて、その分出来たことが出来なかった人もいるんだろうな…
日本の企業の生産性が低いのは、ブラックな環境だけが原因じゃないのかもねと思わないこともないんですよね。
全部カタに嵌った人の中に、どれだけずば抜けた人がいるんだろう。
変な因習を続けていると、青い鳥は逃げてしまうのかも知れないなぁ。
そもそも、減っていく人口に対して人材を求めている企業が多すぎるんですよね。
偉そうに就活生を選別していた企業も、そろそろ社会から選別される時期に入っているのかも。
とにかく、もっと手間や費用や時間を省いてシンプルに採用行程をやってくれる企業が多くなれば、就活で疲れたり苦しむ人も減るんじゃないかなと思うんですよね。
満を持してのエモいグルーヴ
一見するとさらっとした流れに見えてしまうけれど、えもてんさんが後にえもてんさんになるアカウントやブログを始めたのって、タイミングのよさと面白さがあったんでしょうね。
えらてんさんからカイリューさんに「100万投げてみてくれませんか」→「いいっすよー」って流れになるの、なかなかすごい。
カイリューさんも、えらてんさんがリサイクルショップを売るとなった際に出会った方で、えらてんさんの周囲でいい感じのコミュニティが形成されていてこそだったのかな。
しょぼい喫茶店は、耕された土壌に丁度よく植えられた苗木のような存在なのかも知れません。
関わってきた方々が大切に育てるのを手伝ったり、見守ったりして成長していった一本の木のようなイメージです。
大きく枝葉を広げて、木漏れ日が注ぐ下に人々が小鳥のように集まって、羽を休めたり食事を摂ったり、関わり合ったりして、また飛び立っていく。
集まった人たちの想いや言動が響き合って、また「いい感じ」を増幅していく。
都会の中に紛れてある、小さなオアシスとか止まり木とか、そんな優しいものを感じました。
潰れてしまうかもという危機もあった
3の数の法則?みたいなのがあるらしく、何事も3に関わるところが大きな節目になるらしいですね。
例えば漫画や小説だと3巻までで続けられず打ち切りになったりとか、そういう感じの。
しょぼ喫も5月、3か月目に雲行きが怪しくなっていたんですね…
実はしょぼ喫の詳しい場所を調べている時に、食べログでの評価をちょっと見てみたことがあるのですが、その際「行ってみても開いていない時があった」みたいなことを書かれていたレビュアーさんがいたんですよね。
モーニングなどの話題もあったので、丁度この頃からえもてんさんが立て直そうと試行錯誤していた時期だったのでしょうね…
お店は開いている筈の時間に閉まっていると、どうしたんだろうと思われてしまうし、心配する人もいれば不満を感じる人もいるという。
うーん、厳しい。
けど、率直な反応ですよね…
でも、夜営業に入ってくれたバーテンさんたちの協力もあって危機を乗り越えられたの、本当によかったです。
こんな風に、しょぼ喫は街の片隅にずっとあって欲しいなぁ。
しょぼいお店をやっていく上でどうしたらいいかなどの大切なことも、ある程度学べたように思います。
実際にやってみないと分からないことも多いと思いますが…「ちゃんとしすぎなくても出来るんだ」と、ほっとした気持ちにもなれました。
えもてんさんとおりんさんの物語
えもてんさんがTwitterやブログなどでしょぼい喫茶店の構想を語っていた段階で、コンタクトを取ってきたおりんさん。
彼女も激務から一度故郷に帰って静養している状態から、しょぼ喫の構想を知って大きな行動を起こしたんですよね。
きっとおりんさんの力や支えがなければ、えもてんさんも途中で挫けてしまったんじゃないかと思えるくらい、彼女の存在は大きかったのだと思います。
でも、そもそもえもてんさんが動き始めなければ遠い場所で知らない同士だったんですよね。
そんなふたりが、こんな風に運命共同体みたいになっていくのって本当に「エモい」。
会ったこともなくて、ネット上の言葉やえらてんさんの動画でくらいしか知らなかったけれど「この二人、いい感じだなぁ」と思っていたらご結婚されていて「やっぱりそうかぁ~!」ってなりました(笑)
えらてんさんの動画の方は、開店直前と開店してから然程経っていない頃の様子だったのですが、やっぱりこの頃からお互いいい感じだったんでしょうね。
本を読んで知った背景で、プロポーズをされてからお店が大変な状況になってきて、沢山辛いこともあったと思うんですよね。
それでもふたりで乗り越えてきたというのがねぇ、ほんともうエモい。尊い。
この本はおりんさんの「長めのあとがき」で締め括られているのですが、これがまたすごくよくてエモいので…
今、真っ暗なトンネルの中にいる人にも読んで欲しいです。
そして、本が届いた日に嬉しいお知らせがありました。
【ご報告】
— 池田達也(えもいてんちょう)@4月10日「しょぼい喫茶店の本」発売 (@emoiten) April 13, 2019
このたび、私たち夫婦は新しい命を授かりました。
順調にいけば8月に出産予定です。
妻はすでに安定期に入ってはいますが、急な体調不良などで皆様にお力をお貸し頂くこともあるかもしれません。
新しい家族を迎えるために力を合わせて頑張っていきますので、何卒よろしくお願い致します。
先日のえらてんさんの第二子誕生に続いて、おりんさんも8月に出産予定とのこと。
夏が待ち遠しくなりますが、無事に生まれてくるまではおりんさんご自身もお子さんも何が起こるか分かりませんから、お体大事に第一に過ごして欲しいなと思います。
このグルーヴがもっと、沢山の人に届きますように
えもてんさんのご友人が色んなものと一緒に送ってくれた「グルーヴはひとりじゃ生まれない!」という言葉。
パワーワードという言葉があるけれど、本当に強い力を持ったメッセージだなと感じました。
苦しい環境を脱しようとしたえもてんさんが動いて、えらてんさんやカイリューさん、おりんさんと関わり合って、沢山の人が応援や協力をして…
そうやって「エモい」グルーヴが沢山の人たちに伝わっていったんじゃないかな、そうして自分の心のどこかを突き動かされた人もいたんじゃないかなと思います。
こうしてしょぼ喫の物語が本という形になって、今までしょぼ喫を知らなかった人たちの目に触れ、エモいグルーヴがもっと広まっていってくれたらすごく素敵なことですよね。
沢山のあたたかなグルーヴが、生きづらい世の中に苦しんでいる人の、今目の前が真っ暗で閉ざされた場所にいる人の扉を叩くことが出来たら、私も嬉しいです。
しょぼ喫やエデンの界隈は、世界から見ればまだ小さなコミュニティかも知れません。
けれど、そこにはどんな人も生きていていい、中途半端でも大丈夫だという安心感と、少し前の時代の人々が持っていたあたたかい繋がりのようなものを感じています。
大きな世界は変えられなくても、自分の周りがこんな風に、少しでもいい流れれ繋がり合うことが出来たら、世の中はもう少し息をし易くなるのかも知れない。
そう期待しながら、このグルーヴがひとりでも多くの人に届くことを願っています。